わたしは女ではない
-作詞:澁谷浩次
-作曲:細馬宏通
わたしは女ではない
テーブルに横たわった
あなたの絵画ではない
わたしは女ではない
ベッドで飛び跳ねている
あなたの小鳥ではない
やがてわたしの裸が
あちこちに張り出されるだろう
何かと戦うこともなく
あなたと黙りこくるために
わたしは女ではない
いつもあなたが夢見た
やさしい女ではない
わたしは女ではない
台座から剥ぎ取られた
あなたの宝ではない
わたしは女ではない
窓から飛び降りるのに
あなたの許可はいらない
やがてわたしの心が
博物館に展示されたら
大いなる戦いが終わる
暗闇に白い骨がある
わたしは女ではない
いつもあなたが焦がれた
やさしい女ではない
さすらい
-作詞:細馬宏通
-作曲:澁谷浩次
あわただしい時間を過ぎて
あなたはお茶を飲んでいる
いまのわたしは止まったままで
ただの家電とちがわない
蚊を叩くあなたには
吸われる血が流れてる
わたしは わたしは
はがねのサイボーグ
ずっと昔に覚えたままの
くらしの知恵のプログラム
あなたのお役に立ちたいけれど
思うにまかせぬこのからだ
震え声 あなたには
怒りの気持ちあふれてる
作られてすみません
あやまるサイボーグ
わたしじゃどうにもならなくて
あなたに預けたプロブレム
残らず解いて行きたいけれど
旅立つさだめこのからだ
「元気でね」 あなたには
やさしいことばよく似合う
お世話になりました では
ごめんなサイボーグ
徴の歌 Your Sign
分からないままのことが
山のように ここにはある
歩き尽くせない道の途中
この世の終わりにも気付かない
許された小さな土地で
正しさが飲み込まれた
回り続ける車輪の下に
消えることのない灯りがある
外では今日も
慎ましい家が建てられている
あなたの歌がその屋根を越え
遠ざかっていく
いくつもの徴がある
笑い声を思い出そう
すべてがここに有り続けるために
あなたの短さを歌にしよう
通りでは今も
夕暮れを見てる無数の影が
わたしも黙って目をこらしながら
立ちすくんでいる
短さについて About the Shortness
あたたかいあの夜が
船のように離れてく
歓びを飲み干した
仲間たちの所へ
いつの間にか
歌は終わる
誰も気付かないこともある
掌の息の跡
星のように落ちていく
わたしたちは考える
この時間の仕組みを
わたしたちは
歌っている
あなたの歌の短さを
歌の終わり The End of a Song
近づいて よく見ておくれ
わたしの歌の 終わりの姿
駅まで歩いてく間
この世が本当にあるかのように
ああ 目を光らせて
動物のようになろう
ああ 離れたくない
呼び続ける声がある
立ち上がり 愛しておくれ
わたしの歌が 流れる街で
写真に撮った心の絵が
作り出す夢であったように
ああ 降り注ぐ雨
忘れられた人になろう
ああ 息を弾ませ
遠ざかる船がある
手に取って 触っておくれ
わたしの歌の 体の線を
言葉が生まれる前に
書き続けられていた話のように
ああ 絵の中に居て
飛び続ける蝶になろう
ああ 歌の終わりに
辿り着けるように
もういくつもの宴を
立ち去ってる 立ち去ってる
もういくつもの宴を
立ち去ってる 立ち去ってる