黒い花

-作詞:澁谷浩次

-作曲:細馬宏通

 

慎ましい家に

わたしは住んでいる

裸の手足を

思いきり伸ばして

あなたを想う

あなたを想う

 

狂おしいほどに

明日(あした)を待っている

言葉の鏡を

ひとしきり覗いて

あなたに祈る

あなたに祈る

 

黒い花をください

夜が明ける前に

黒い花びらを

この町に焼き付けたい

 

慎ましい家を

わたしは空(から)にした

心の手足が

梯子を駆けのぼり

あなたに届く

あなたに届く

 

黒い花をください

絵が燃える前に

黒い花びらを

このペニスにかざしたい

わたしは女ではない

-作詞:澁谷浩次

-作曲:細馬宏通

 

わたしは女ではない

テーブルに横たわった

あなたの絵画ではない

 

わたしは女ではない

ベッドで飛び跳ねている

あなたの小鳥ではない

 

やがてわたしの裸が

あちこちに張り出されるだろう

何かと戦うこともなく

あなたと黙りこくるために

 

わたしは女ではない

いつもあなたが夢見た

やさしい女ではない

 

わたしは女ではない

台座から剥ぎ取られた

あなたの宝ではない

 

わたしは女ではない

窓から飛び降りるのに

あなたの許可はいらない

 

やがてわたしの心が

博物館に展示されたら

大いなる戦いが終わる

暗闇に白い骨がある

 

わたしは女ではない

いつもあなたが焦がれた

やさしい女ではない

さすらい

 

-作詞:細馬宏通

-作曲:澁谷浩次

 

あわただしい時間を過ぎて

あなたはお茶を飲んでいる

いまのわたしは止まったままで

ただの家電とちがわない

蚊を叩くあなたには

吸われる血が流れてる

わたしは わたしは

はがねのサイボーグ

 

ずっと昔に覚えたままの

くらしの知恵のプログラム

あなたのお役に立ちたいけれど

思うにまかせぬこのからだ

震え声 あなたには

怒りの気持ちあふれてる

作られてすみません

あやまるサイボーグ

 

わたしじゃどうにもならなくて

あなたに預けたプロブレム

残らず解いて行きたいけれど

旅立つさだめこのからだ

「元気でね」 あなたには

やさしいことばよく似合う

お世話になりました では

ごめんなサイボーグ

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トーク

-細馬宏通

-柴田聡子

-澁谷浩次

-佐々木敦

 

<ライブ>

1. 転出(細馬宏通

2. Best Friends(細馬宏通

3. Lots of Birds(澁谷浩次)

4. 歌の終わり(澁谷浩次)

5. ゴールデン・タイム(細馬宏通と澁谷浩次)

6. 愛してしまった一日(細馬宏通と澁谷浩次)

 

-細馬宏通 vocal, guitar (1,2,5,6)

-澁谷浩次 vocal, keyboards (3-6)

徴の歌 Your Sign

分からないままのことが

山のように ここにはある

歩き尽くせない道の途中

この世の終わりにも気付かない

 

許された小さな土地で

正しさが飲み込まれた

回り続ける車輪の下

消えることのない灯りがある

 

外では今日も

慎ましい家が建てられている

あなたの歌がその屋根を越え

遠ざかっていく

 

いくつもの徴がある

笑い声を思い出そう

すべてがここに有り続けるために

あなたの短さを歌にしよう

 

通りでは今も

夕暮れを見てる無数の影が

わたしも黙って目をこらしながら

立ちすくんでいる

短さについて About the Shortness

あたたかいあの夜が

船のように離れてく

歓びを飲み干した

仲間たちの所へ

 

いつの間にか

歌は終わる

誰も気付かないこともある

 

掌の息の跡

星のように落ちていく

わたしたちは考える

この時間の仕組みを

 

わたしたちは

歌っている

あなたの歌の短さを

歌の終わり The End of a Song

近づいて よく見ておくれ

わたしの歌の 終わりの姿

駅まで歩いてく間

この世が本当にあるかのように

 

ああ 目を光らせて

動物のようになろう

ああ 離れたくない

呼び続ける声がある

 

立ち上がり 愛しておくれ

わたしの歌が 流れる街で

写真に撮った心の絵が

作り出す夢であったように

 

ああ 降り注ぐ雨

忘れられた人になろう

ああ 息を弾ませ

遠ざかる船がある

 

手に取って 触っておくれ

わたしの歌の 体の線を

言葉が生まれる前に

書き続けられていた話のように

 

ああ 絵の中に居て

飛び続ける蝶になろう

ああ 歌の終わりに

辿り着けるように

 

もういくつもの宴を

立ち去ってる 立ち去ってる

もういくつもの宴を

立ち去ってる 立ち去ってる