細馬宏通と澁谷浩次 @ 仙台 火星の庭

-細馬宏通 vocal, guitar

-澁谷浩次 vocal, piano, bass

-山路智恵子 (12-15, 17-19) percussion, backing vocals

 

 

1. 魔法が使えない (Hosoma/Shibuya)

2. 一日 (Hosoma/Shibuya)

3. 泣こうじゃないか (Shibuya/Hosoma)

4. ポゼッション (Shibuya/Hosoma)

5. 異常気象 (Hosoma/Shibuya)

6. さようならネコちゃん (Shibuya/Hosoma)

7. 最近の人 (Hosoma/Shibuya)

8. あなたの本 (Shibuya/Hosoma)

9. 青野さん (Shibuya/Hosoma)

10. 多田サービス (Shibuya/Hosoma)

11. 潮流と恩寵 (Shibuya/Hosoma)

12. 妖怪七変化 (Hosoma/Shibuya)

13. ノブヲ (Shibuya/Hosoma)

14. わからぬわかれ (Hosoma/Shibuya)

15. スプリング・ハズ・カム (Hosoma/Shibuya)

16. ブラインドデート (Shibuya/Hosoma)

(アンコール)

17. トマトジュース (Shibuya/Hosoma)

18. 殺し屋さん (Shibuya/Hosoma)

19. レッツ・ダンス (Bowie)

ブラインドデート

作詞:澁谷浩次

作曲:細馬宏通

 

一時間前から
見知らぬ誰かが
わたしを見ている
あなたは誰ですか

 

炎天下の路上
わたしとあなたは
見つめ合っている
四つの目がある

 

触れても触れても
見えないものがあるのに
ほんとにほんとに
生きているといえるのか


わたしは意を決して
見知らぬ誰かの
顔をそっと触った
一寸いいかしら

 

水面下のsorrow
わたしもあなたも
写り合っている
写真だったのだ

 

見えても見えても
分からぬものがあるのに
ほんとにほんとに
死んでいるといえるのか


見ることは奪うことだと
誰かが言っていたけれど
わたしの目の黒いうちは
そんな話は信じない


百年前から
わたしとあなたは
見つめ合っている
ブラインドデートで

スプリング・ハズ・カム

作詞:細馬宏通

作曲:澁谷浩次

 

春跳ねる
春跳ねる人
春は寝る
春は寝る人々

 

水に濡れる人
自ら濡れる人々

 

箱に貼る
箱に貼る人
箱のなか
箱のなか人々

 

映画を撮る人
終わるのを見る人々

 

春果てる
春果てる人
恥ずかしい
恥ずかしい人々

歌を探す人
歌い始める人々

妖怪七変化

作詞:細馬宏通

作曲:澁谷浩次

 

ようかいだけでも、恐ろしいのに
7倍おそろしいその姿
ひとつひとつはどうってことない
あいてだが

 

変化1! かわいい少女が髭の青年に
変化2! 青年の髭がくるくる回る
変化3! 青年が髭のまわりを回る
つよいぞうずまき つよいぞうずまき
めくるめーく めくるめーく ほんきの世界

 

呼んでも無駄さー
呼んでも無駄さー
名前などない
あえて呼ぶなら ようかいななへんげ


近代に消えた 伝説のなにか
7つの姿が あらわれきえる
ひとつひとつをみつけるだけでは
理解できない

 

変化4!ほんきとおもったらただのあそび
変化5!あそんでいるのはしっぽだった
変化6!しっぽからたぬきがはえ
ちがうぞたぬき ちがうぞたぬき
たぬきとおもたら たぬきとおもたら おまえは世界

 

読んでも無駄さー
読んでも無駄さー
心などない
あえて読むなら ようかいななへんげ!

潮流と恩寵

作詞:澁谷浩次

作曲:細馬宏通

 

お父さん 僕はお父さん
アメ車を乗り回してた
借り物だったけど

 

お父さん 僕はお父さん
いつもは中古の国産
ドヤ顔でパワーウィンドウ

 

潮流 この潮流に巻き込まれて
ブレーキもきかない
アクセルも踏めない
恩寵 あの恩寵に身を委ねて
いまさら家には帰れない お父さん

 

美術館 僕は美術館
アートを遠巻きに見て
感想を聞かせて

 

美術館 僕は美術館
みんな帰っていった
打ち上げでさらに遠くへ

 

潮流 この潮流に追い込まれて
ため息もつけない
大声も出せない
恩寵 あの恩寵に身を委ねて
いまさら壁画に戻れない 美術館

 

避難民 僕は避難民
故郷(くに)では絵をかいていた
誰にも邪魔されず

 

避難民 僕は避難民
今ではコンクリの壁に
正気を保つための絵を

 

潮流 この潮流に巻き込まれて
お祈りもきかない
愛情もわかない
恩寵 あの恩寵に手を伸ばして
いまさら仮には出られない 避難民

ノブヲ

作詞:澁谷浩次

作曲:細馬宏通

 

ご自由にお持ち帰り下さいと
書かれた箱から
忘れじの面影という本をもらい
自転車に乗って

 

青葉通りの交差点で僕の
名前を呼ぶ声
驚き見ればそこには忘れじの
ノブヲが立ってた

 

ノブヲとの出逢いは33年前
DOLLという雑誌
ミニコミ・サークル欄に載っていた
仙台のノブヲ

 

その頃僕は北海道に居て
詩人になろうと
原稿用紙を買ってきたのさ
町の文具屋で

 

ノブヲと僕の果てしない文通
嵩む電話代
詩と小説を互いに送り合い
マジで熱かった

 

知り合ってから8年目の夏に
ノブヲの実家に
僕は訳あって転がり込んだのさ
平成5年に

 

最初の2年ぐらいは楽しかった
映画ばかり観て
朝になるまで語り合ったのさ
部屋も借りたんだ

 

そのうち僕にも友達ができて
即興しようと
楽器を鳴らす毎日で忙しい
町の公園で

 

ノブヲはひどい女たらしだった
毎晩のように
付き合うのが僕はうんざりだった
ノブヲのナンパに

 

ノブヲはブランドものが好きだった
着飾って歩く
ノブヲとの繋がりは薄れてゆき
今に至るのさ

 

僕は僕の人々と
君は君の人々と
みんなはひとりのために
ひとりはみんなのために

 

お互い結婚してから少しずつ
疎遠になったよ
ノブヲと僕の果てしない断絶
そんなものかもね

 

最後に聞いたノブヲの近況は
仲間との芝居
チャンバラとゴスロリを融合した
ロックオペラだった

 

芝居の音楽を頼まれたけど
スルーしようと
僕は目を伏せて通り過ぎたのさ
うしろめたかった

 

青葉通りの交差点で少し
言葉を交わして
連絡先も何も聞かないまま
僕らは別れた

 

僕は僕の人々と
君は君の人々と
みんなはひとりのために
ひとりはみんなのために

 

ノブヲとの出逢いは33年前
DOLLという雑誌
ミニコミ・サークル欄に載っていた
仙台のノブヲ