ノブヲ

作詞:澁谷浩次

作曲:細馬宏通

 

ご自由にお持ち帰り下さいと
書かれた箱から
忘れじの面影という本をもらい
自転車に乗って

 

青葉通りの交差点で僕の
名前を呼ぶ声
驚き見ればそこには忘れじの
ノブヲが立ってた

 

ノブヲとの出逢いは33年前
DOLLという雑誌
ミニコミ・サークル欄に載っていた
仙台のノブヲ

 

その頃僕は北海道に居て
詩人になろうと
原稿用紙を買ってきたのさ
町の文具屋で

 

ノブヲと僕の果てしない文通
嵩む電話代
詩と小説を互いに送り合い
マジで熱かった

 

知り合ってから8年目の夏に
ノブヲの実家に
僕は訳あって転がり込んだのさ
平成5年に

 

最初の2年ぐらいは楽しかった
映画ばかり観て
朝になるまで語り合ったのさ
部屋も借りたんだ

 

そのうち僕にも友達ができて
即興しようと
楽器を鳴らす毎日で忙しい
町の公園で

 

ノブヲはひどい女たらしだった
毎晩のように
付き合うのが僕はうんざりだった
ノブヲのナンパに

 

ノブヲはブランドものが好きだった
着飾って歩く
ノブヲとの繋がりは薄れてゆき
今に至るのさ

 

僕は僕の人々と
君は君の人々と
みんなはひとりのために
ひとりはみんなのために

 

お互い結婚してから少しずつ
疎遠になったよ
ノブヲと僕の果てしない断絶
そんなものかもね

 

最後に聞いたノブヲの近況は
仲間との芝居
チャンバラとゴスロリを融合した
ロックオペラだった

 

芝居の音楽を頼まれたけど
スルーしようと
僕は目を伏せて通り過ぎたのさ
うしろめたかった

 

青葉通りの交差点で少し
言葉を交わして
連絡先も何も聞かないまま
僕らは別れた

 

僕は僕の人々と
君は君の人々と
みんなはひとりのために
ひとりはみんなのために

 

ノブヲとの出逢いは33年前
DOLLという雑誌
ミニコミ・サークル欄に載っていた
仙台のノブヲ