危機 Crisis

住処を追われた蟻の群れが、隣の家へと移り住んだ。


光が入らぬその家へ、静かな行列が歩いていった。


扉を開けたら、一寸先も見えないぐらいの
猛吹雪だった。


気まずい沈黙が湖のように広がり、誰もが
傷ついていた。


叫び終えて家に帰り、あなたは何をするのだろうか。


理解できない、目にも見えない
誰かと組み合い、戦っているのか。


裸で見上げた稲妻が、あなたに向かって近づいてくる。


恐怖が渦巻く、あなたの中へ。
彼らが見つけた、あなたの中へ。


抱きしめられて息もできない
あなたの危機が燃え上がった。


隙間をすり抜け、蟻の群れが目指して行くのは
ガラスの器。


大きな器は蜜で満たされ、すべての蟻が飛び込んで行く。