シブヤくん Shibuyakun

shibuya_igloo2008-11-08

水の涸れたプールをよじのぼって
鼠のように他人の家に忍び込んだが
家の中なのにゴーゴーと風が吹いている
自分だけの詩を書いたあとで
昨日の線に腰掛けるのは
逮捕されるよりも辛い


余白に鉛筆で走り書きされた
無意識の注釈
足の裏に静かに触れた白い枠
そういうものを懐に入れて
身体が消えてしまう前に
道の対岸まで歩き切らなければならない


お願いだ 僕の身体を消さないでくれ
僕を消してしまわないでくれ どうか
僕の居場所を残しておいてください
お願いだ 僕を消してしまわないでくれ


冷えきった国道沿いのベンチで
僕のためらいを鎮圧しようとする
騒音のかたまりがやって来るのを待っていた
倍近く年を取ったあなたは
水に濡れた携帯電話を握りしめて
世界の結び目まで僕を連れて行かねばならない


鏡の向こうで踊るあなたの欲望を
僕は生きることにした そのためには
凍った土を一晩かけて掘ってでも
僕たちの家を作らねばならない
空に住む鳥からミミズを分けてもらってでも
このテーブルの左右にしがみついて生き抜かねばならない


シブヤくん 罪は重いよ
それは見逃せないよ シブヤくん
シブヤくん もう遅いよ
みんなとっくに行ってしまったよ シブヤくん


  • demo録音
  • 12/1加筆