家 a house 《Lyric》

家の方へ
見慣れた街角へ
わたしは歩いていった
背中を丸めていた


わたしはまるで
浜辺の蟹のように
涙を流していた
あなたを呼び続けながら


屋根をすべりおりて
床に耳をあて
井戸で花びらを拾い
梁に吊り下がり


町のはずれ
鳥や猫に紛れ
あなたは振り向きもせず
国道の草をかじった


庭の歌をうたい
三和土に眠り
勝手口を開け放ち
蜘蛛を捕える


家の方へ
忘れられた土地へ
砕けてあとかたもなく
くすんだ灯の方へ